『Lean from the Trenches』の日本語版書名が『リーン開発の現場』 に決まりました。副題は『カンバンによる大規模プロジェクトの運営』です。今日は、日本語版書名を考える際に、原著者のヘンリック・クニベルグさんに「from the Trenches」にこめられた意味を質問したときのお話です。
ヘンリックさんは、過去に『塹壕より Scrum と XP』を書いています。ここでは「from the Trenches」が「塹壕」と訳されています。「Trench」は、複数形で「塹壕、前線、第一線、陣地」という意味があります(参考:スペースアルク)。そして、比喩的表現として「とてもタフな仕事場」という意味もあるそうです。この「Trenches」の意味について、ヘンリック氏はこう述べています。
「Trenches」にはいくつかの意味がある。
- 実際に働く場所。
- 学校で習うことができない人生の中でもとてもハードで大変な仕事。
- 解決しなければならない緊急の問題を抱え、実践的で創造的であることが求められる戦場。
- 人々が集まり一緒に働く場所。
「職場は戦場だ」という表現に似ていますね。ただ、本書をはじめて読んだときに、「戦う場所」というより、私は「現場感」を強く感じました。これについて、ヘンリック氏はこう教えてくれました。
僕が「Trenches」を使う理由は、実際の経験をこの本に書いたからだ。例えば、戦場の最前線にいる誰かの経験を、僕はこの本に書いた。理論ではなく経験だ。これを強調するために「Trenches」を使ったんだ。(メールより意訳)
本書は事例紹介であり、物語が書かれています。その事例は、塹壕から――現場から生まれた経験です。そこで、ヘンリック氏に「現場(GENBA)」という日本の言葉を紹介したところ、彼はこう答えてくれました。
「現場」という日本語はいい訳かもしれない。
初めてこの本を読んだ時に感じた「現場感」をいかに伝えるか?そんなことを考えながら翻訳を進めています。